鳥取のNPO法人の経営を支援します
とっとり経営管理研究所では鳥取県で奮闘するNPO法人の経営管理を研究し、その活動を支援しています。

鳥取のNPO法人の経営を支援します

このホームページは、鳥取県において地域社会に貢献するNPO法人の経営のお役に立つことを目的に作られています。

 

ここに掲載していない経営や運営に関する事項の質問や要望があれば、できるだけ対応しています。

NPO法人特有の困難さとは?

NPO法人といえば、高い税制優遇が認められていますが、その反面、認証機関(県)の監視下におかれ、提出する書類の難易度が高く煩雑となります。また、役員数など高い民主制が求められ、意思決定に著しく時間を費やしてしまうという難しさがあります。

 

 

 また、NPOに関する法律は難解で、NPO法人がやってはいけないこと、すべきでないことも多く規定されていますが、実際その辺りを把握している法人は多くはありません。

 

 ここで「非営利」の理解が重要となるのですが、収益事業を行ってもOKですし、利益を上げてもOKです。ただし、その上がった利益を分配(株主配当)してはならない、これが「非営利」です。よって、お金を頂くことそのものは営利活動ではない(ひとまず税務上の定義は置いておいて…)ということを念頭に置く必要があります。

  1. 剰余金(利益)を寄付者たちに分配することはできない。残ったお金は事業に使わなければならない。
  2. 解散した場合、残余財産を分配することはできない。

 非営利とは主にこの2点のことを意味します。よって、思いっきりNPO法の中で稼いでもOKです。また、誤解が多い「分配禁止」とは、寄付者を含めて働いていない人は基本的にお金をもらえないという意味で、実際に時間を使って働いている人は給与を支給できます。非営利の本来の意味は「剰余金を分配してはいけない」なのに、非営利というニュアンスから、お金が絡んではいけないというイメージになってしまっていて「NPOなのにお金を取るんですか?」という質問は実際に多いです。

NPOの税制優遇とは?

NPO法人は、全額課税ではなく、収益事業のみ課税されます。収益のうち法人税法に定める収益事業に該当する場合にのみ課税されるので、事業ごとに収益事業に該当するかどうかの判定が非常に重要となります。

 

 他方、NPOに関する法律では「特定非営利活動に係る事業」と「その他の事業」の区分をしていますが、それと法人税法上の区分とは一致しません。両者は全く違う法律なのです。

 

 NPO法上の事業区分と、法人税法上の事業区分は、以下のように整理されます(抜粋)。例えば「まちづくり事業」を実施する法人が、行政や企業から「まちづくりに関する委託」を受ける事業の実施は「NPO事業」ですが「請負業」に該当するので課税されます。

 

 なお、収益事業に対しての法人税の実行税率(普通法人)は、以下のようになっています。

 

理事・理事会・社員総会とは?

  1. 理事
  2.  理事は法律上3人以上必要です。あまり多くの理事を選任した場合、意見が割れたときや主張が強くなったとき、事業活動がストップしかねません。事業の安定と税制優遇のバランスは非常に難しそうです。また、親族規制があり、各役員につき役員となる親族は1人以内かつ役員総数の3分の1以内にしなければなりません。

     

    ◆親族理事の制限
     NPO法人では、株式会社でよく見られるような、決定権を特定の一族が持ついわゆる「同族経営」に制限(3親等以内)を設けています。後に記載する報酬規制と同じく3分の1ルールと覚えておくとよいでしょう。

     

    【例】 理事3人+監事1人のモデルで役員のうち2人が親族 → 総数の3分の1を超えているのでダメ
    【例】 理事5人+監事1人のモデルで役員のうち2人が親族 → 総数の3分の1を超えていないのでOK

     

  3. 理事会
  4.  理事会を設置するかは自由ですが、理事が複数いる場合に意見が割れたとき、どうやって意思決定をするかを明確にするため、理事会を設置するという手もあります。また、理事会設置法人は、社員総会の大部分の権限が移譲されるため、社員総会に臆せずに意思決定できるというメリットがあります。
     一方、民主的な運営ができる反面、創業者は自分が私財を投じて設立した法人を追われるおそれもあります。ちなみにNPO法には、理事会という機関はありません。

  5. 監事
  6.  監事は法律上1人以上必要です。職務については、会計監査のみと誤解されることも多いのですが、それだけではなく、いわゆる業務監査も含まれます。あまり熱心で面倒見がよく、経営に口を出すことが多くなると、理事との違いがなくなってくるので注意が必要です。

  7. 事務局長
  8.  NPO法人の執行機関である理事会の決定事項を遵守し、実際の業務に当るのが事務局で、事務局長は社員総会や理事会の決定事項を局員全員に周知させること、現場で生じた問題を理事会に報告や提言をする役割が期待されます。事務局の窓口担当者の対応がNPO法に違反してしまうことも考えられ、あるいは新たに選任された理事の行動が問題となることも考えられます。事務局長は可能な限りNPO法の主旨や定款を把握し、所轄庁の指導を準拠しながら円滑な業務執行を行う必要があります。

  9. 社員総会
  10.  社員は法律上10人以上必要です。社員とは従業員のことではなく、出資株主のような存在です。通常、社員総会は、定款で理事会に委任した事項を除いてNPO法人の一切の事項を決める権限があります。(一般に、@決算や事業計画の承認、A理事の選任、B定款の変更、C合併や解散の決議の権限以外は定款で理事会に委任している。)
     株式会社であれば事業に莫大な出資を頂いているので、その意見は傾聴すべきですが、NPO法人では例えば年会費50円の社員に法人活動や役員の人事や給与が左右されるのは問題ですが、NPO法人が広く市民の評価にさらされることで税制優遇のメリットを受けているので、やむを得ないでしょう。

     

    営利性を追求する法人では、会費収入から脱却して社員数を減らして迅速な意思決定ができる環境を整備し、公益性を追求する法人では、社員数を増やして多様な意見を取り入れながら会費収入を確保するというモデルに分かれる傾向があります。

役員報酬の制限とは何か?

非営利としての分配禁止とは、寄付者を含めて「ノーワーク・ノーペイ」という意味で、実際に時間を使って働いている人は当然に給与を受けることができます。また「役員総数のうち報酬を受ける者の数は3分の1以内」というルールがあり、この2点を理解しなければなりません。

 

【例】理事3人+監事1人、全員フルタイム稼動

 

 法律そのものをみると、そのうち給与をもらえるのは1人だけとなりますが、理事は職員を兼務できるので、役員としての報酬は1人だけですけど、職員としての労務の対価なら人数制限には掛かりません。一方、監事は職員を兼ねることはできないので、職員としての給与を受けることはできません。

 

【案】役員 理事3 → 理事=職員給与×3人
      監事1 → 監事=役員報酬

 

とすれば、一応は全員がもらえることになります。

会計基準は何に従う?

NPO法人は、NPO会計基準に従うことになります。市販のNPO専用の会計ソフトを導入すれば、最低限の法定書類を作ることができます。

  • 非営利活動以外の収益事業を行う際の注意点

 NPO法では、本業の非営利活動に支障がない限り「その他事業」を行うことができ、その場合、非営利活動とは特別会計として区分しなければならず、その利益は非営利活動のために使わなければならないとされています。そのため、経理担当者には、収入支出が「その他の事業」に当る場合は、その旨を指示する必要があります。また、「その他事業」は法人税の課税対象になることがあることにも留意する必要があります。

 

会員への説明責任はどこまで?

NPO法には、事業計画や収支予算書を作成することまで求められていません。小規模なNPO法人は別として、多くの利害関係者が関わるNPO法人では、その業務遂行のために事前に計画し、予算を立てておくことが望ましいでしょう。

  • 収支計算書
  •  一年間にいくらの収入があり、どのような活動にいくら支出したかを社員(会員)に報告する書類です。この書類をもとに年度末後の社員総会に諮ります。役員は会員から預かったお金を団体の目的に沿って使ったことを説明する責任があり、この書類を用います。収支計算書は一年間の会計の状況を伝えるだけでなく、今後の活動について計画するためにも有効なものです。

  • 収支予算書
  •  一年の活動の予定をお金の面から表し、何にどこまでお金をかけられるのかを把握するための書類です。収支計算書を参考にしながら次年度の予算を組み立てていきます。今年度の決算の状況や、次年度の運営方針を踏まえ、次年度増やしたほうがよい科目、減らしたほうがよい科目を反映させて予算を積み上げていき、それが現状の会費や補助金等で賄えるかを判断します。

収支計算書や収支予算書に明確な定義はなく、貸借対照表と損益計算書をいいとこ取りした書類で、従来から会計能力に乏しい小規模な個人事業や町内会などで使用してきた書類です。逆を言えば直感的に大体の財政状況を把握できるというメリットがあり、説明用に予算と決算、前年度の比較の欄を設けることも多くあります。

経理担当者を悩ませる収支計算書と収支予算書とは?

通常の経理業務は市販のNPO会計ソフトを使用すれば貸借対照表、活動計算書、財産目録から注記表まで、いわゆる決算書一式がワンクリックで印刷できますが、先に記載した「収支計算書」と「収支予算書」については、おそらく市販ソフトが皆無なため、エクセルで毎年ポチポチと時間をかけて作っている法人がほとんどです。

 

 この2つの書類は任意作成ですが、公益性や会員数、事業規模と会費依存度のバランスで、作成の有無を決めればよいと考えられます。(例示)

  1. 社員と理事が同一人の場合、説明する意味もないので、作成しない。(営利型に多い)
  2. 社員の会費で運営している場合、説明責任が必要なので、作成する。(町内会など)
  3. 会費は徴収しているが事業規模に比べて僅かな場合、作成しない。(グレーゾーン)
適正な会計基準で作成した決算書があるのに、なぜ収支計算書や収支予算書が必要なのですか?

おそらくですが、適正な会計書類は一般の方には解読しにくく、収支計算書の方が感覚的に見易いのだと思います。また、予算と決算の比較や前年度比較も見たいという要望に対して、1枚で説明できるメリットがあるので、企業努力として作成しているものと考えられます。

当研究所では、VBAを組み入れ、前年データが新規作成データにワンクリックで飛ぶよう、既存のエクセルファイルの改良を提案したりしています。

決算前後のスケジュールは?

・2ヵ月以内に法人税の申告と納税 … @
・2ヵ月以内に定期社員総会を開催 … A
・3ヵ月以内に事業報告書を提出 …… B
・2年ごとに役員変更登記を申請 …… C
・2年ごとに役員変更届を申請 ……… D

 

 

@ 法人税申告
 法人税に関する法律で、決算から2ヵ月以内に税額を申告し、納付しなければなりません。県税および市税についても同様です。

 

A 定期社員総会
 通常は定款で「年1回開催する」とされていますが、前記@のとおり、法人税申告のために総会で決算を承認する必要があるので、現実には2ヵ月以内に開催します。総会に先立ち「招集通知」を書面で知らせます。
 通常は財務決算書と事業報告を合わせて承認決議に諮るのですが、事業報告について個人的には、下記Bの作成手間を考慮して、同じモノを作っておけばよいかと思います。

 

B 事業報告書
 NPOの情報公開の観点から、毎事業年度の活動をまとめて、事業年度の終了から3ヵ月以内に認証局(県)に提出しなければなりません。県はホームページで市民に一般公開します。この事業報告書は3年間未提出が続くと、県はNPO認証を取り消すことになります。つまり強制解散を強いられます。

 

C 役員変更登記
 NPO法人の役員の任期は2年以内とされているので、2年ごとに法務局に変更登記を申請しなければなりません。再任で変更がなくても登記は必須です。登記費用は非課税です。

 

D 役員変更届
 上記C後段のように、役員に変わりがなければ届出は不要なのですが、1人でも変更があれば認証局(県)に提出しなければなりません。

NPO法人に勤務すると、2年に一度は役員の再任登記や、毎年の資産額の登記など、法務局に出向く機会が多くなり、登記事務に強くなる必要があります。

困ったときに役立つマニュアルも整備!

困ったときに役立つマニュアルも整備しています。
併せて、NPO法人に関する法律上のお問い合わせフォームも整備していますので、有効活用してください。